
外国人の雇用を考えているけど、「特定技能」と「技能実習」って何が違うの?と疑問に思いませんか?名前も似ているし、どちらも外国人を受け入れる制度だから混同しがちですよね。
でも実は、この2つの制度は目的も内容もまったく違うんです!今回は、外国人雇用を検討している企業の皆さんに向けて、特定技能と技能実習の違いをわかりやすく解説していきます。
そもそも特定技能と技能実習って何?
まずは、それぞれの制度の基本を押さえておきましょう。
技能実習制度とは
技能実習制度は1993年に始まった制度で、日本の技術や知識を開発途上国に移転し、その国の経済発展に貢献することが目的です。
つまり、「日本で技術を学んで、母国に帰って活躍してね!」という国際貢献の制度なんですね。
発展途上国の人材に日本の技能を習得してもらい、母国の発展に役立ててもらうことを期待しているため、法律上も「労働力不足の調整弁であってはならない」と明記されています。
でも正直なところ、実際には人手不足を補うための労働力として活用されているケースが多く、本来の趣旨との乖離が問題視されてきました。
こうした背景もあって、技能実習制度は2027年に廃止され、新しく「育成就労制度」に移行することが決まっています。
特定技能制度とは
一方、特定技能制度は2019年4月にスタートした比較的新しい制度です。こちらは建前なしに、ズバリ日本の人手不足を解消することが目的!
中小規模事業者をはじめとする深刻化する人手不足の解消のため、一定の専門性や技能を持っている外国人を受け入れるための制度として作られました。
つまり、即戦力として働いてもらうための在留資格なんです。
2025年6月末時点で特定技能外国人の在留者数は約33万6000人となっており、毎年過去最高を更新し続けています。そして今後さらに拡大していく見込みです。
特定技能と技能実習の7つの大きな違い

それでは、具体的にどんな違いがあるのか見ていきましょう。
1. 制度の目的が全く違う
これが最も重要な違いです。
技能実習: 国際貢献・技能移転が目的
特定技能: 人手不足解消が目的
技能実習は「日本の技術を学んで母国に持ち帰る」ことが前提なので、あくまで「実習」という位置づけ。一方、特定技能は最初から「労働力」として外国人を受け入れることが認められています。
この目的の違いが、後述する様々な条件の違いにつながっているんです。
2. 対象となる職種・分野が異なる
技能実習の対象職種
技能実習は、90職種、166作業に及びます(2024年8月現在)。そもそも研修制度であった歴史的事情があり、職種や作業項目が非常に細分化されているのが特徴です。
例えば
機械加工
溶接
建設関係
食品製造関係
繊維・衣服関係
農業関係
など
作業内容が「○○作業」と細かく指定されており、その範囲外の仕事はできません。
特定技能の対象分野
一方、特定技能は2024年3月に4分野が追加され、現在16分野が対象となっています。
介護
ビルクリーニング
工業製品製造業
建設
造船・舶用工業
自動車整備
航空
宿泊
農業
漁業
飲食料品製造業
外食業
自動車運送業(2024年追加)
鉄道(2024年追加)
林業(2024年追加)
木材産業(2024年追加)
特定技能は業務区分単位で行うことができる仕事が決まるのに対し、技能実習は職種作業単位で行うことができる仕事が決まります。特定技能の方が幅広い業務に従事できるため、企業にとっては柔軟に人材を活用しやすいというメリットがあります。
3. 取得要件が大きく違う
技能実習の場合
技能実習生になるために、事前の試験はありません(介護職種のみ日本語能力N4が必要)。これから日本で技術を学ぶことが目的なので、特別なスキルは求められないんです。
特定技能の場合
特定技能の場合、人材不足を補うための技能を有している労働者に対して在留資格が認められる制度であるため、技術と日本語双方の能力が求められます。
具体的には
技能試験: 各分野で定められた試験に合格すること
日本語試験: 日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テストに合格すること
ただし、技能実習2号を良好に修了した場合は、これらの試験が免除されて特定技能1号に移行できます。実際、特定技能外国人のほとんどが、技能実習から在留資格を変更した人材という分野も多いんです。
4. 転職の可否
これも大きな違いです!
技能実習: 原則として転職不可
特定技能: 同じ分野内であれば転職OK
技能実習は「実習」という位置づけなので、基本的に同じ企業で実習を続けることが前提です。やむを得ない事情がある場合を除き、転職はできません。
一方、特定技能制度では、転籍が認められています。より良い条件の職場に移ることができるため、外国人労働者にとっては魅力的ですが、企業側にとっては人材流出のリスクもあるということですね。
5. 在留期間の違い
技能実習の在留期間
技能実習1号: 1年以内
技能実習2号: 2年以内
技能実習3号: 2年以内
合計最長5年
技能実習は段階を経て最長5年間日本に滞在できますが、その後は原則として帰国する必要があります(特定技能への移行を除く)。
特定技能の在留期間
特定技能1号: 通算で最長5年
特定技能2号: 3年・1年・6か月ごとに更新可能で、更新回数に上限なし
特に特定技能2号は、在留期間に上限がないため、条件を満たせば永住許可申請も可能です。長期的に日本で働き続けられるという点で、外国人にとって大きなメリットになります。
6. 家族の帯同
技能実習: 家族の帯同は原則不可
特定技能1号: 家族の帯同は原則不可
特定技能2号: 配偶者と子の帯同が可能
特定技能2号は、要件を満たせば家族を日本に呼び寄せることができます。これにより、外国人労働者が安心して長期的に日本で働ける環境が整います。
7. 受け入れ人数の制限
技能実習の人数制限
技能実習は、受け入れ企業の常勤職員数に応じて受け入れ人数に制限があります。
常勤職員30人以下: 3人
常勤職員31〜40人: 4人
常勤職員41〜50人: 5人
常勤職員51〜100人: 6人
常勤職員101〜200人: 10人
常勤職員201〜300人: 15人
常勤職員301人以上: 常勤職員総数の20分の1
優良な監理団体・実習実施者の場合は、この人数枠がさらに拡大されます。
特定技能の人数制限
特定技能制度では「企業ごとでの受け入れ人数枠」がありません。これは大きなメリットですね。
ただし、例外として以下の2分野には制限があります。
介護分野: 日本人等の常勤介護職員の総人数まで
建設分野: 事業所の常勤職員の総数まで
受け入れに必要な機関の違い

技能実習の場合
技能実習生を受け入れる機関は監理団体(組合)が大半で、基本的に非営利法人になり、許可要件は厳格です。
監理団体は2024年6月時点で3,739件あります。企業が技能実習生を受け入れる際は、この監理団体を通すことが一般的で、監理費用などのコストが発生します。
特定技能の場合
特定技能では登録支援機関を通して受け入れることができます。
また、企業が自社で支援体制を整えられる場合は、登録支援機関を通さずに直接雇用することも可能です。
実際の受け入れ状況はどうなっている?

技能実習の現状
長年運用されてきた制度だけあって、まだまだ多くの外国人が技能実習生として働いています。
ただし、前述の通り、技能実習制度は2027年に廃止され、「育成就労制度」に移行することが決定しています。この新制度では、特定技能1号への移行がしやすくなるなど、より実態に即した運用が目指されています。
特定技能の現状
飲食料品製造業: 74,538人(26.2%)
工業製品製造業: 45,279人(15.9%)
介護: 44,367人(15.6%)
建設: 38,578人(13.6%)
国籍別の内訳:
ベトナム: 133,478人(46.9%)
インドネシア: 53,538人(18.8%)
フィリピン: 28,234人(9.9%)
ミャンマー: 27,348人(9.6%)
ベトナム人が約半数を占めていますが、インドネシアやミャンマーからの受け入れが急増しているのが特徴です。
都道府県別では
愛知県: 20,757人(8.2%)
大阪府: 16,543人(6.6%)
埼玉県: 15,530人(6.2%)
千葉県: 15,185人(6.0%)
東京都: 14,920人(5.9%)
製造業の工場が多い愛知県がトップですが、全国的に広がりを見せています。
企業はどちらを選ぶべき?

それぞれの制度にメリット・デメリットがあります。
技能実習のメリット
試験がないため、人材の確保が比較的容易
転職ができないため、人材の定着が期待できる
長年の実績があり、受け入れのノウハウが豊富
技能実習のデメリット
作業内容が細かく制限されており、柔軟な配置転換が難しい
監理団体への費用など、コストが高くなりがち
最長5年で帰国するため、長期的な人材育成が困難
2027年に制度廃止が決まっている
特定技能のメリット
即戦力として期待できる(試験合格者)
幅広い業務に従事させられる
企業ごとの人数制限がない(介護・建設を除く)
特定技能2号に移行すれば、長期雇用が可能
直接雇用も可能で、コストを抑えられる場合がある
特定技能のデメリット
転職が可能なため、人材流出のリスクがある
技能試験・日本語試験に合格した人材を見つける必要がある
まだ新しい制度のため、試験実施数が少ない分野もある
結論: 今後は特定技能が主流に
現状を総合的に見ると、即戦力として外国人を雇用することが可能であるということ、また特定技能2号への移行も狙いやすいことから長期的な雇用が可能であり、人材確保及び育成をすることが技能実習よりも容易と言えます。
技能実習制度は2027年に廃止が決まっており、今後は特定技能制度が外国人雇用の中心になっていくことは間違いありません。
特に2024年3月には自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野が新たに追加され、より多くの業種で特定技能外国人を受け入れられるようになりました。
まとめ: 自社に合った選択を

特定技能と技能実習は、名前こそ似ていますが、目的も内容もまったく異なる制度です。
技能実習: 国際貢献目的、職種限定、転職不可、最長5年、2027年廃止予定
特定技能: 人手不足解消目的、分野別で幅広い業務可能、転職可能、長期雇用も可能
これから外国人雇用を検討するなら、将来性を考えると特定技能制度を軸に考えるのがおすすめです。
ただし、現在技能実習生を受け入れている企業は、彼らが特定技能に移行できるようサポート体制を整えておくことも重要です。
外国人労働者の受け入れは、単なる人手不足対策ではなく、企業の成長戦略の一つとして捉えることが大切です。
制度をしっかり理解して、自社に合った形で外国人材を活用していきましょう!
