
外国人材の採用を検討されている方やグローバル化が進む中、優秀な外国人材を雇用したいと考えている企業が増えていますよね。
でも「就労ビザの手続きって難しそう」「どんな書類が必要なの?」「費用はどれくらいかかるの?」と不安に思っていませんか?
この記事では、外国人を雇用する際に必要な就労ビザの申請手続きから費用、必要書類まで、社長さんが知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
初めて外国人を雇用する企業でも安心して進められるよう、実務的な情報をお届けしますので、ぜひ最後までお読みください。
そもそも就労ビザって何?基本を押さえよう

就労ビザとは、外国人が日本で働くために必要な在留資格のことです。正確には「在留資格」と呼ばれ、一般的に「ビザ」と混同されがちですが、実は別物なんです。
ビザは日本に入国するための許可、在留資格は日本に滞在して活動するための資格という違いがあります。
日本で働くための在留資格にはさまざまな種類があり、外国人が従事する業務内容によって取得すべき資格が異なります。主な就労系の在留資格には以下のようなものがあります。
主な就労ビザの種類
技術・人文知識・国際業務: IT技術者、エンジニア、通訳、デザイナー、マーケティング担当など、いわゆるホワイトカラーの仕事に従事する場合
技能: 外国料理のコック、ソムリエ、パイロットなど、特殊な技能を要する業務
企業内転勤: 海外の親会社・子会社から日本の事業所へ転勤する場合
経営・管理: 会社の経営者や管理者として働く場合
教授・教育: 大学教授や学校の教員として働く場合
医療: 医師、歯科医師、看護師などの医療従事者
特定技能: 介護、建設、製造業など特定の分野で働く場合(2019年に新設)
中小企業が外国人材を雇用する場合、最も多く利用されるのが「技術・人文知識・国際業務」です。この在留資格は業務範囲が広く、多くの職種に対応できるため、まずはこの資格を中心に理解しておくとよいでしょう。
就労ビザ取得の条件とは?雇用前にチェック!

就労ビザを取得するためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。申請してから「実は条件を満たしていませんでした」となると時間もコストも無駄になってしまうので、雇用前にしっかり確認しましょう。
外国人本人の要件
学歴・実務経験の条件
技術・人文知識・国際業務の場合、基本的には以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
大学を卒業していること(学士号取得)
日本の専門学校を卒業していること(専門士の称号を有する)
実務経験が10年以上あること(通訳・翻訳・語学指導の場合は3年以上)
つまり、原則として高卒の外国人を「技術・人文知識・国際業務」で雇用することは難しいということです。ただし、10年以上の実務経験があれば学歴要件は不要になります。
業務内容と学歴の関連性
重要なポイントは、大学や専門学校で学んだ内容と、日本で従事する業務内容に関連性がなければならないということです。
例えば、経済学部を卒業した人を工場の単純作業員として雇用することはできません。学んだ知識を活かせる業務であることが求められます。
雇用企業側の要件
外国人本人だけでなく、雇用する企業側にも条件があります。
適正な雇用条件
日本人と同等以上の報酬を支払うこと
安定した事業を営んでいること(継続性・安定性)
雇用契約の内容が適切であること
特に報酬については、「同じ業務を行う日本人社員と同等以上」という基準があります。外国人だからといって低い給与で雇用することは認められません。これは差別防止の観点から厳しくチェックされるポイントです。
企業の財務状況
会社の経営状態も審査対象になります。赤字続きの企業や設立間もない企業の場合、追加の説明資料を求められることがあります。ただし、これで即不許可になるわけではなく、しっかりとした事業計画や資金繰りの説明ができれば許可される可能性もあります。
就労ビザ申請の基本的な流れを理解しよう

就労ビザの申請手続きは、外国人がどこにいるかによって流れが変わります。大きく分けて「海外から新規採用する場合」と「すでに日本にいる外国人を雇用する場合」の2パターンがあります。
パターン1: 海外から新規採用する場合
海外在住の外国人を採用する場合は、「在留資格認定証明書交付申請」という手続きを行います。
ステップ1: 在留資格認定証明書の申請
まず企業が入管(出入国在留管理局)に対して、在留資格認定証明書の交付を申請します。この証明書は「この外国人を日本に呼び寄せて働かせることに問題ありません」という入管のお墨付きのようなものです。
申請は外国人本人、企業、または行政書士などの代理人が行うことができます。実務上は、企業の人事担当者や行政書士が申請することが多いです。
ステップ2: 審査(標準処理期間: 1〜3ヶ月)
入管で審査が行われます。この期間は申請内容や時期によって異なりますが、通常1〜3ヶ月程度かかります。繁忙期(4月入社前の2〜3月など)はさらに時間がかかることもあります。
ステップ3: 証明書の交付と海外への送付
許可が下りると在留資格認定証明書が交付されます。この証明書を海外にいる外国人本人に郵送します。
ステップ4: 現地の日本大使館・領事館でビザ申請
外国人本人が自国の日本大使館または領事館で、在留資格認定証明書を提示してビザ(査証)を申請します。通常、数日〜1週間程度で査証が発給されます。
ステップ5: 来日
査証を取得したら、証明書の有効期間(通常3ヶ月)内に日本に入国します。入国時に在留カードが交付され、晴れて日本で働けるようになります。
パターン2: 日本在住の外国人を雇用する場合
すでに日本にいる外国人を雇用する場合は、状況に応じて手続きが異なります。
ケースA: 在留資格の変更が必要な場合
例えば、留学生として日本にいる外国人を卒業後に採用する場合、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」などへ在留資格を変更する必要があります。この場合は「在留資格変更許可申請」を行います。
申請してから許可が下りるまでの期間は2週間〜1ヶ月程度が目安ですが、やはり時期によって変動します。重要なのは、在留資格の変更許可が下りるまでは就労できないということです。
内定を出しても、許可前に働かせてはいけません。
ケースB: 在留資格の更新が必要な場合
すでに就労ビザを持っている外国人を雇用する場合で、転職に伴う手続きが必要なケースもあります。基本的に転職自体は可能ですが、業務内容が大きく変わる場合は「就労資格証明書」を取得しておくと安心です。
また、在留期間が切れる前には「在留期間更新許可申請」が必要になります。更新手続きは在留期間満了の3ヶ月前から可能なので、余裕を持って準備しましょう。
必要書類は何?ケース別にチェックリスト

就労ビザ申請で最も大変なのが書類の準備です。必要書類は企業の規模や申請するビザの種類によって異なりますが、ここでは一般的なケースでの必要書類を紹介します。
企業側が準備する書類
必ず必要な基本書類
在留資格認定証明書交付申請書(または在留資格変更許可申請書)
雇用契約書または採用通知書のコピー
会社の登記事項証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
事業内容を明らかにする資料(会社案内、パンフレット、ウェブサイトのプリントアウトなど)
直近年度の決算書類のコピー(損益計算書、貸借対照表など)
企業のカテゴリーによって追加で必要な書類
入管では企業を4つのカテゴリーに分類しており、規模が大きく信頼性の高い企業ほど提出書類が少なくて済みます。
カテゴリー1: 上場企業、保険業を営む相互会社など → 提出書類が最も少ない
カテゴリー2: 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表で給与所得の源泉徴収税額が1,500万円以上の企業
カテゴリー3: 前年分の源泉徴収税額が1,500万円未満の企業
カテゴリー4: 新規設立企業など
カテゴリー3や4に該当する中小企業の場合は、以下の追加書類が必要になることがあります。
従業員名簿
事業所の写真
雇用理由書(なぜこの外国人を雇用する必要があるのか)
事業計画書(特に新規設立企業の場合)
外国人本人が準備する書類
証明写真(4cm×3cm、申請前6ヶ月以内に撮影したもの)
パスポートのコピー(顔写真のページ)
履歴書
最終学歴の卒業証明書(原本)と日本語訳
最終学歴の成績証明書(原本)と日本語訳
在留カード(日本在住の場合)
学歴証明が難しい場合
母国で発行された卒業証明書には日本語訳を添付する必要があります。翻訳者の指定はありませんが、誰が翻訳したかを明記する必要があります。
また、実務経験で申請する場合は、前職の企業からの在職証明書(業務内容と勤務期間が記載されたもの)が必要です。
業務内容を説明する書類の重要性
実は、就労ビザ申請で最も重要なのが「業務内容の説明資料」です。雇用契約書に簡単な職務内容しか書いていない場合は、別途詳細な業務説明書を作成することをおすすめします。
業務説明書に記載すべき内容
具体的な業務内容(できるだけ詳細に)
業務と学歴の関連性
1日または1週間の業務スケジュール例
使用する言語やスキル
配属予定の部署と組織図
入管の審査官は「この外国人が本当に専門的な業務に従事するのか」「単純労働ではないか」をチェックします。そのため、業務内容を具体的かつ説得力を持って説明することが許可への近道になります。
費用はどれくらい?コストを把握しよう

就労ビザ申請にかかる費用は、大きく分けて「法定費用(入管に支払う手数料)」と「その他の実費」、そして「専門家に依頼する場合の報酬」があります。
法定費用(入管手数料)
在留資格認定証明書交付申請: 無料
在留資格変更許可申請: 4,000円(収入印紙)
在留期間更新許可申請: 4,000円(収入印紙)
意外かもしれませんが、海外から呼び寄せる際の在留資格認定証明書交付申請は無料です。変更や更新の際に4,000円がかかります。
その他の実費
証明書類の取得費用: 登記事項証明書600円、住民票など
翻訳費用: 外国語の書類を日本語に翻訳する場合(自社で対応すれば無料)
郵送費: 書類の郵送代
写真撮影費: 証明写真代
これらの実費は合計で数千円程度です。
行政書士への報酬相場
自社で申請することも可能ですが、多くの企業は行政書士などの専門家に依頼します。専門家に依頼するメリットは、確実性と時間の節約です。
行政書士の報酬相場は地域や事務所によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
在留資格認定証明書交付申請: 8万円〜15万円
在留資格変更許可申請: 8万円〜12万円
在留期間更新許可申請: 3万円〜5万円
初回の申請(認定証明書交付申請)は書類も多く複雑なため報酬も高めですが、更新手続きは比較的シンプルなので報酬も安くなります。
専門家に依頼するメリット
必要書類の漏れや不備を防げる
業務内容の説明など、許可を得やすい書き方をアドバイスしてもらえる
不許可になった場合の理由分析と再申請のサポート
人事担当者の工数削減
初めて外国人を雇用する場合や、複雑なケース(学歴と業務の関連性が弱い、企業規模が小さいなど)では、専門家への依頼を検討する価値があります。
トータルコストの目安
海外から外国人を1名採用する場合のトータルコストは以下のようになります。
自社で申請する場合: 1万円〜2万円(実費のみ)
行政書士に依頼する場合: 10万円〜17万円(報酬+実費)
年間複数名の外国人を雇用する予定がある場合は、初回は専門家に依頼しつつノウハウを学び、2回目以降は自社で対応するという方法もあります。
よくあるトラブルと注意点

就労ビザ申請では、知らないと後で困ることがいくつかあります。実際によくあるトラブルや注意点をご紹介します。
申請中は就労できない
在留資格変更申請中は、新しい在留資格での就労はできません。留学生を卒業後に採用する場合、4月1日入社を予定していても、その時点で変更許可が下りていなければ働かせることはできません。
不法就労となると、企業側も罰則の対象になります。必ず許可が下りてから就労を開始させましょう。繁忙期を考慮して、余裕を持った申請スケジュールを組むことが重要です。
学歴証明書が取得できないケース
母国の大学が閉鎖してしまった、戦争や災害で書類が失われたなど、学歴証明書が取得できないケースもあります。この場合、卒業証書のコピーや成績表、同窓会の証明など代替書類で対応できる場合があります。諦めずに入管や専門家に相談してみましょう。
業務内容の変更には注意
就労ビザで許可された業務内容と実際の業務が大きく異なる場合、在留資格の取消しや次回更新時の不許可につながる可能性があります。配置転換や業務内容の変更を行う際は、在留資格との整合性を確認しましょう。
大きな変更がある場合は「就労資格証明書」を取得しておくと、更新時にスムーズです。
更新を忘れないように
在留期間が切れると不法滞在となってしまいます。外国人社員の在留期限は人事部でしっかり管理し、期限の3ヶ月前には更新手続きを開始できるよう準備しましょう。
リマインダーシステムを導入するなど、管理体制を整えることをおすすめします。
申請が不許可になったらどうする?
残念ながら、申請が不許可になってしまうこともあります。でも、不許可=諦めるではありません。
不許可理由を確認する
まずは入管で不許可理由を確認しましょう。窓口で理由を教えてもらえます(詳細な理由開示制度もあります)。理由がわかれば、対策を立てることができます。
よくある不許可理由は以下の通りです。
業務内容と学歴の関連性が不明確
給与が低すぎる
会社の経営状況が不安定
提出書類の不備や説明不足
再申請は可能
不許可になっても、問題点を改善すれば再申請が可能です。例えば、業務内容の説明を詳しくする、雇用条件を見直す、会社の事業計画をより具体的に説明するなどの対応が考えられます。
再申請では、前回の不許可理由にどう対応したかを明確に示すことが重要です。
まとめ: 余裕を持った準備と専門家の活用を

外国人雇用の就労ビザ申請は、確かに複雑で時間もかかります。でも、ポイントを押さえて準備すれば、決して難しいものではありません。
成功のポイントをおさらい
雇用前に要件を確認: 外国人の学歴・経験と業務内容の関連性をチェック
余裕を持ったスケジュール: 申請から許可まで最低2〜3ヶ月は見ておく
書類は丁寧に準備: 特に業務内容の説明は詳細かつ説得力を持って
適正な雇用条件: 日本人と同等以上の給与、明確な雇用契約
必要に応じて専門家を活用: 初回や複雑なケースでは行政書士のサポートを検討
優秀な外国人材は、企業の成長に大きく貢献してくれます。グローバル人材の採用は、今後さらに重要性を増していくでしょう。この記事が、皆さんの外国人雇用の第一歩を踏み出す助けになれば嬉しいです。
